しえろう日記

刀ミュに狂った女のひとりごと

【X(旧Twitter)まとめ】葵咲本紀の「夢、手、血、家族」というキーワードについて

【X投稿文章の再掲】

とりあえず投稿文をそのまま転記していますが、あとでまとめ直す予定です。

Xより見やすいと思いますので、こちらに再掲しています。

 

これは御笠ノ作品の特徴だと思っているけれど、葵咲本紀に限らず刀ミュはキーワードが随所に散りばめられ、恐ろしいほど上手く多重的な意味を持って効果を発揮している。カノン的とでも言えば良いのかな。あおさくにおけるキーワードについて、特に「夢、手、血、家族」について取り上げて考えたい。

まず夢から。 あおさくにおいては、夢には以下の意味がある。 ・寝ているときに見る夢=基本的には過去を思うこと ・将来の夢、希望 ・現実ではないものごと さらには作品自体がたった一夜の夢の話という形態をとっている。舞台が夏である点も含めて、まさに真夏の夜の夢。しびれますね。

夢といえば、信康と貞愛の夢に対する意見の相違が面白い。夢とは何かを語る際にふたりの間には夢に対しての価値観の違いが見受けられる。価値観と言ったが、実際にはアドバイスする相手にとって今後有益であろう言葉を与えた。それは、この言葉を発しているふたりがすでに物部であり三日月と接した経験があることからだろう。自身の今後についても、秀忠と秀康の今後についても知っている可能性が高い。それを踏まえて、二人からの夢(希望)に対しての言葉は・・・

信康(秀忠に対して):身分や立場が叶えてくれるものでない。思い続けた者が叶えられるもの。 運命抗いタイプと言っていいかも。

貞愛(秀康に対して):なりたい者になれるんじゃない、なれる者になれるんだ。 こっちは運命受け入れタイプと言える。

結果的にではあるが秀忠は天下人となり、秀康は天下を獲れぬまま若くして亡くなっている。繰り返すが、物部であるふたりは、秀忠と秀康の今後を知っている可能性がある。

それを踏まえて考えると、天下を治める秀忠には常に夢を自らで思い続けるように、天下を獲れない秀康には決まった運命を受け入れることを諭す。家族を想うがゆえの、精一杯の助言だったんだろうな。 まあ、周りも貞愛も秀康の夢は天下だと思っていたから先のようなアドバイスが生まれたのだろう。

しかし、秀康の夢は天下よりも(もちろん天下もあっただろうが)大好きだった兄を取り戻したいというものだった。その点に関しては、秀康の夢は叶っている。兄に対して手を伸ばし続けたため、(結果的にではあるが)兄との再会という夢を果たしたんだろうな。

夢についてまだまだ語りたいんだけど、たぶんこのままいくと延々と夢語りをするので、夢についてはここで切ることにする。 次は「手」! みほとせから継続して、あおさくでも「手」が作品のキーワードとして登場している。あおさくにおいては作中に手と手が触れる場面が数度登場していた。

明石と篭手切、明石と鶴丸は挨拶という名目で相手の力を測る動作として。篭手切・先輩と貞愛・秀康が、夢語り♪の中で、何もつかめなかったと言う相手の手を握りしめるために。おまけ的ではあるが、手記に葵咲本紀と名前を付ける際にも、村正が蜻蛉切の手を包み込んでいる動作が見られる。

あおさくにおける手は、以下の意味を持っている。

・力量をはかるためのもの

・天下を掴むためのもの

・夢や愛するもの、無くしたものを追うためのもの

・生きていることを実感するもの

作品全体を見ると、葵咲本紀は夢に手を伸ばすひとたちの物語だったと思ってる。

 

村正:信康

蜻蛉切:村正

明石:(おそらく失った)家族

篭手切:先輩

鶴丸:(おそらく失った)仲間や三日月

御手杵:自分の記憶

みたいな。

もちろんそれ以外もあるんだけど。 歴史上の人物たちも例外ではなくて

家康:鳥居元忠(物吉)が言った通りの「つらいときこそ笑顔でいる」自分

信康:愛する家族(兄弟や掛川の民)

秀康:兄信康や天下

貞愛:秀康

秀忠:父の理想

これらのように、何かに手を伸ばしている。

刀剣男士の人選については、もう言うことなしですやん。篭手切に至っては名前にすら手が入っているし、最終場面では先輩に対して「その篭手、貰います」の一言で回収する。褒めることばっかりだけど、本当にすごいなって。 余談になるが、刀ミュは「名は体を表す」ことが非常に多い。恐らく意識してそうされているのだろうし、実際に心覚で描かれている内容からも、私はそう受け取ってる。 まあとにかくうまいよねって話です。

これも無限に話すことになってしまうので、続いて「血」の話。

あおさくでは「血」も重要なキーワードとして登場する。信康が手をかざして見えると歌う「血潮」もそうだし、作中では村正、明石、篭手切、鶴丸が怪我をする描写がある。特に鶴丸の白衣に染まる赤い血なんて印象的だった。視覚的なものではないけれど、篭手切の歌で胸の高鳴りを示す「トクントクン」も心臓が脈打つ、広義で血の音。さらには「血縁」も血のひとつ。血縁関係≒家族はあおさくにおいて重要な役割を持っている。特に、作中の視覚的な血の描写が血縁関係を表現していることが特徴でもあると私は思っています。 基本的に「家族」とは血縁関係で成り立つ関係が多い。兄弟だったり親子だったり、生まれながらにして家族なわけだよね。本作では貞愛の台詞で「血のつながりばかりが家族じゃねえ」と明言するように、養子のように血縁関係がなくても家族としての絆はあるということが示される。一方で、もちろん血縁による家族というものにも当然絆がある。どちらが優れているとか、どちらが本当の家族かという話は本作には出てこない。血じゃないんだよ、絆が強い方が家族なんだよ!というメッセージでは一切ない。そういうところが刀ミュの良いところだと思っている。血のつながりの有無を問わず、相手を愛しく思っていればどちらも家族なんだよね。

まあ、本作においては家族とは何かという問答がメインではないので流して本題に行きます。 あおさくでは、「赤い」血としてきちんと観客が視覚的に見たのは、明石と篭手切がお互いを庇った際にできた傷の血と、鶴丸検非違使戦で流した血。 村正については確かに検非違使に深手を負わされて衣装は乱れていたけれど、血のりメイクは施されていなかった。

よって、あおさくで「出血」が視認できたのは上記3名のみである。(だったよね・・・?)

⇒追記:待って、今ちゃんと見直したら明石くん出血してないわ。ざっくりいった描写があったから、血糊あったと思ってました!すみません! 傷と出血自体はあるが観客に見せなかった、という話で明石は進めます💦

 

先に結論から述べておくと、「血」を浴びせることで「血縁関係」が生じる(家族になる)という意味があるのではないかと私は思っている。

先に、村正の特殊性について述べたい。

作中最も深いであろう傷を負った村正。気絶もしていたし、その後もしばらく傷が癒えていないのでかなりの重傷だったはず。恐らく出血もしているはずだが、赤い血は見えなかった。これは、村正にとって本作には血縁関係者がいないということを意味しているのではないかなって。すでに蜻蛉切との関係性については言及したけれど、村正と蜻蛉切は兄弟や親子のような血縁関係がない。そもそも刀工の千子村正と藤原正真に血縁関係があるとは考えられていないじゃないですか。藤原正真自体が千子派であるという説を採用しているだけで、千子村正と正真が親子や兄弟といったわけではない。可能性は0ではないのだろうけれど。ここからも、刀剣男士の千子村正蜻蛉切は、いわゆる血縁が無い関係だと私は認識している。つまり彼らは血縁関係がないにも関わらず、葵咲本紀でお互いを「ファミリー/家族」と名前を付けた。

血の繋がりが無いのに、家族になることを選んだということ。すでに触れた内容なので重複にはなってしまうけれど、作中の要素と合わせて考えて、村正と蜻蛉切は本作においては(疑似的な)夫婦関係を築いていたと考えている。夫婦という関係である以上、村正と蜻蛉切の間に血縁関係(血の共有)は必要ない。したがって、村正は蜻蛉切または他者に対して自らの血を浴びせなくて良いのではないだろうか。この理屈で言うと、村正と蜻蛉切の(疑似的)息子として登場する信康もその対象だ。ふたりの息子ポジションとして、精神的・身体的結合の後という(言葉を包まずに言えば出産として)ベストタイミングで出現するのだが、実際には血を分けることはできていないということ。血縁がなくても家族になれるという点で、しっかりと家族として絆のある関係が描かれてはいるけれど、信康との間に血縁は生じていないんだよね。

繰り返すけど、村正はすでに自分で選んだ血縁不要の家族がいるし、血のつながりがないけど絆のある信康がいるので、出血する必要が無かったよね、って話でした。

 

ではまずは篭手切くんから。篭手切は終盤で明石を庇う際に怪我を負う。

その後の動向を追うと、篭手切は出血した状態のまま先輩の手を握っている。具体的に血のりを付けている部分でべたりと触っているわけではないが、篭手切が出血状態で肉体的に接触するのは先輩ただひとり。裏を返せば、先輩(稲葉江)という同刀工、いわば同じ人から生まれた仲間だったから、とも受け取れる。 一方で明石はというと、篭手切に庇われた直後に敵の攻撃を本来の利き手である左の腕に受ける。上の訂正通り、出血はない。その後も誰にも触れていないまま。さらには本丸帰還後もその傷を手入れ部屋で治そうとしていなかった。傷は確実にあるのに、傷口も血も見せていない。

これって、血を浴びせる相手を待っているのではないかなって。言葉がグロすぎるね!血の繋がった相手を待っているということです。それはきっと愛染と蛍丸という同派(血縁関係者)だろうなって。

あおさくエピローグ部分を見れば、明石だけが包帯で覆っていて見えないが、未だに血を流し続けているんだよね。それって、家族が見つかっていないということなんだろうな。 明石と村正って本作で結構対比的に描かれていると思っているんだけど、この点も象徴的だと思った。この話題はまた別途。

鶴丸はというと、彼は検非違使と戦ったことで負傷してしまい、自らの血で白い服が真っ赤に染まっている。ここのシーン、敵や別の人の血ではなくて自分の血であることが強調されているのが特徴的だった。綺麗にと言ってはアレだけど、見事なほどに背中も負傷している。つまりは、誰からも血を浴びせられてもいなければ、浴びせてもいない。また、赤い血は見えているが、鶴丸においては傷口を観客は見ることができなかった。負傷したのちは、鶴丸も明石同様誰にも触れていない。それどころかすべて自分の服で血を吸い上げてしまった。任務後は元の衣装に戻っていた。傷口を見せず、血は一切他者に浴びせない鶴丸。血の表現としての観点からは、彼には血縁関係者がいない。誰かに浴びせようとすらせず、自らの傷を見せず、血を浴びせようともしない。ずっとひとり、孤高の存在なのだろうということが分かる。強いなあ、鶴さんは。

感想にはなるけれど、きっと血縁関係者がいないからこそ、本丸の仲間が彼にとっての唯一の家族であり、守る対象なんだろうな。ひとりで戦える強さという点では、大倶利伽羅とよく似てるよなあとも思いました。

 

続いては「家族」の話。

あおさくのメインテーマともいえるのが「家族」。先にも述べたけど、血縁関係の有無を問わず家族にはなれる。ここでは家族とは何かというテーマではなく、あおさくにおける刀剣男士の関係性を見ていきたい。

まず前提として、刀剣男士同士の関係性って、刀工や元の主の関係性が反映していることが多い。粟田口や源氏のふたりが兄弟なのが良い例。一方で、同じ刀工作の刀であっても、明確に兄弟として描かれていない者も多い。江とかもそうだよね。では、元主や刀工的な観点から、葵咲本紀の刀剣男士を見ていくことにする。 村正派以外の4振りの刀剣男士は、原作上もこれといったやりとりや特殊会話が発生する関係ではない。しかし少し紐解いていくと、かなり近い関係性がある刀たちであることがわかる。 まずは結城秀康の家系に関連しているのが、結城秀康の槍であった御手杵

さらに刀剣男士としては登場しなかったが、今作のキーマンでもあった先輩=稲葉江もまた結城秀康の愛刀である。(あおさく上演後にゲーム実装された稲葉江は、御手杵に対して特殊台詞があったよね!)また、作中で言及はないが明石もまた結城秀康の血筋である6男松平直明の明石松平家に伝来した刀。

つまりは御手杵と明石は同じ血筋の出身であるということ。親子とも言える。なお作中で「新参者」と自称する明石が本丸で御手杵と挨拶を交わすシーンは無い。さらには出陣の際に敵の狙いが結城秀康であることを受け、「御手杵はんのかつての主でっしゃろ」と発言する。明石にとっての御手杵は刀時代から知っていた存在なんだろうな。その後出陣先で結城秀康の顔は知らなかった様子を見せるので、刀時代に交流があったかどうかまではわからないが。とにかく、元主の関係性という点から見れば、明石と御手杵も十分家族と呼べる間柄だと思う。

篭手切は稲葉江とは同刀工作の刀である。江自体が兄弟設定ではないため、同派であっても血縁のある家族と言えるかは疑問がある。明石の言葉を借りれば、「縁のある者」や「お友達」と呼んでいるが、同じ刀工(グループ)という点では便宜的に家族としてまとめたい。 こうした前提を踏まえて見るが、審神者は刀剣男士の中で篭手切に稲葉江を託した。本来、血縁的・元主的な関係性を見れば、篭手切よりも御手杵や明石に頼んでも良さそうだ。新人である篭手切よりも、少なくとも御手杵の方が経験も豊富だし。それでも選ばれたのが篭手切であるというのは、本件の適任は篭手切だと審神者が判断したということだろう。恐らく御手杵は結城家時代の記憶が薄く、明石も結城本家とはそれほど深い関わりが無かった、もしくは明石にはこの密命を依頼できない状態であると審神者が判断したと考えられる。 概念的な見方も含まれるが、本作は鶴丸以外が皆家族の繋がりを持った存在だったんだなあって。

あと、これは余談なんだけど。蜻蛉切の(概念的)息子ポジションに桑名江と本作の信康がいるけど、どちらも農業に縁のあるひとだよね。信康については吾兵の影響なんだけど、これもまた良い縁だなあと思いました。農業って戦を無くすための手段。戦国時代を象徴するような、武神のような蜻蛉切対して、子のポジションである桑名くんと信康さんのふたりとも農業にゆかりを持つっていうのが、個人的にはすごくぐっとくるポイントです。