しえろう日記

刀ミュに狂った女のひとりごと

【X(旧Twitter)まとめ】御手杵くんて不思議だよね、という話

【X投稿文章の再掲】

とりあえず投稿文をそのまま転記していますが、あとでまとめ直す予定です。

Xより見やすいと思いますので、こちらに再掲しています。

 

あおさくの中で最も何を考えているのかわからなかったのが御手杵だった。人が良くて素直なので、何かを隠しているわけではない印象なんだけど、個人的に引っかかることが多かったので、思い返してみる。

葵咲本紀における御手杵の行動を追ってみる。御手杵が登場するのは出陣前の本丸でのシーン。篭手切と会話する穏やかな様子が見える。その後のレッスン中、話題が夢に触れた際に、炎に包まれるような白昼夢を見ていた。なお、秀康の経歴を篭手切に話すがあまり深くは知らない様子で、ほとんどが「~と言われている」という伝聞形式で話す。出陣命令が下り敵の狙いが結城秀康であると告げられた際には、こちらも炎を思い出し少し放心状態となっている。明石にかつての主であること指摘された際には一応返事はするもののリアクションが薄い。

戯曲本の中でも、この対応に明石は「?」と不思議そうにしている。出陣後に秀康と対峙した際には戸惑いを見せて攻撃できず。貞愛と出会い行動を共にしていく中で、影と響き♪で消されたものや忘れられたものの存在を問い、貞愛が「覚えている」ことに希望を見出す様子が見えた。

その後の秀康にはきちんと攻撃できていたことも伺える。ざっくりだけど、あおさくでの御手杵の行動はこんな感じ。 では何が気にかかるのか。結論から言うと、御手杵って秀康のことあんまり覚えていないんじゃないかな。脚本のミスリード技術が上手すぎるので全然気づけなかったが、御手杵が秀康を覚えていない前提で進むと結構しっくりくる描写が多い。元主なのに伝聞形式で語り、元主であることを指摘されても大きなリアクションはなし。貞愛に振る話題も、「忘れられること」に焦点を当てている。

同じ刀ミュで比較すると、元主が時間遡行軍に狙われていた和泉守兼定がいるが、彼とは明らかに反応が違う。少し話は逸れるけど、刀剣男士は歴史を守るために、元主を救ったり逆に殺さなければいけなかったりという状況になり、そこがドラマを生むことが多いじゃないですか。

葵咲本紀では、元主が別の刀と感応して闇落ちしてしまった。元主を救うために御手杵が部隊に編成される!という御手杵の出陣作品としては絶好の舞台。でも、御手杵と秀康のドラマは本編中で全くと言っていいほど描かれない。ドラマ的には貞愛と御手杵の方が濃かったし、これに関しては「血の繋がりばかりが家族じゃねえ」を体現していた部分だと思う。とにかく、御手杵は元主に対する思いが深くは見えなかったし、これが御手杵への違和感となっているのかも。その違和感を、御手杵は結城時代の記憶がないのではないか、という解釈として私は受け取りました。

焼失した刀剣男士って、記憶がないように描かれることがある。御手杵もきっとそのひとりなのかなって。すべてとは言わずとも秀康との記憶がかなり曖昧。作中で秀康に攻撃できなかったのも、愛する元主だからではなくて、自分が覚えていない元主に対する気まずさといった独特の感情があったからなんじゃないかな。だからこそ、貞愛と出会って、忘れてしまった/忘れられてしまったことへのわだかまりが少し解消されていたのは良かったなあと。エピローグ部分で篭手切のレッスンを断るときにも、「この前はこの前、今は今」という言葉が出ていた。過去を乗り越えたというとちょっと言いすぎだと思う。でも、秀康という存在を自分の目で見た経験と、自分を覚えてくれている人が歴史の中にいるという希望を持って、失われた過去ではなく今を生きることができるようになったのではないかと私は思います。

ところで刀ミュの御手杵くんってめちゃくちゃ良い。田中涼星さんの御手杵って、もちろん外見とか雰囲気が原作通りなのはもちろんなんだけど、あれはご本人独自の雰囲気なのか、お芝居の作り方によるのかはわからないけど、どこか掴みどころがないように見える。言葉にしにくいんだけど、薄ぼんやりと怖さを感じるんですよ。あ、100%良い意味で言ってます!めちゃくちゃ良い人で可愛らしさもあって、まさに「みんな大好き御手杵くん!」像を作っている一方で、じゃあ御手杵はどんなキャラクターか、と問われるとちょっと言い淀んでしまうような。それが、涼星さんの演じる刀ミュの御手杵からは感じられると思っている。つまりそれって「御手杵」を表現するには最高なんじゃないだろうかと思うわけです、個人的には。そんな印象を受けるキャラって刀ミュの中でも少ないなあと。これを表現した制作陣と役者さんに拍手を与えたい。ブラボー!